<p align="right"><span class="small-text">公開日: 2024-11-17<br>更新日: 2024-12-01</span></p> # スタディ通信:2024年9月号 今年の3月から『諸相』スタディは[BBスタディ・ガイド・ミーティング](https://syoso.org/bbsg)を譲り受けました。今月で半年、早かったような遅かったような。 私としては、BBSGのリーダーの[ペー氏](https://note.com/modern_orchid605/)の面倒をみるのも今月で終わりなので、ほっと一息です。まぁ6ヶ月はミーティングのノウハウを身に付ける面倒見ようと思ってましたが、それ以上はゴメンです。友達づくりしてるわけじゃなし。 これから私はBBSGではコ・リーダーとして、裏方や[ケツモチ](https://kotobank.jp/word/%E7%A9%B4%E6%8C%81%E3%81%A1-2121740)でもしたいですね。とっとと自分の足で立ちなされ、おっさん(後ろから蹴飛ばす音 --- ### ふりかえり **シラバス :** [Conclusion(結論)](https://syoso.org/syllabus/conclusion) さて、今回の『諸相』スタディでは[スポンサーシップ](https://ieji.org/glossary/sponsor)に焦点を絞りました。私はAAに来てこの4年ちょいで、さまざまなミーティングに参加しましたが、AAの両輪の一つである「スポンサーシップ」にフォーカスしたミーティングには一度もお目にかかったことがありません。 しかし、アメリカではワリー・Pが[スポンサーシップにフォーカスしたワークショップ形式のミーティング](https://secure40.securewebsession.com/aabacktobasics.org/)を開催しているのは見聞きしていましたし、それは日本にも必要だろうと考えていました。 でも、ワリーのテキストややり方を翻訳して日本でやる気にはなりません。だって、そういったものは自分たちで創るのが面白いと感じるからです。私はお仕着せの物は、すぐ飽きてしまう性分なのです。 なので、今回からはずっとやりたかった<span style="text-decoration: underline; text-decoration-color: #ADD8E6; text-decoration-thickness: 4px;">「AAのスポンサーシップは何であり、何でないかを『宗教的経験の諸相』とビッグブックを使って提示する」</span>という、おそらく世界初の試みに取り掛かった次第です。 前回の『諸相』スタディで文庫判下巻の「結論」まで終わりましたので、やっとやりたいことができる態勢になったのでした。 &#13;&#10; &#13;&#10; しかし、やってみると分かりましたが、これは大変です。 『諸相』とビッグブックの全体の流れを理解していることはもちろんですが、これまでの自分が提供してきたスポンサーシップがどのようなものだったかも問われます。 『諸相』をスタディするのは、最近は慣れたので難しくありません。しかし今回はやりながら「準備した資料の流れでは駄目だ」とすぐ気づいたので、ミーティングを進行しながら資料を大幅に前後させ、飛ばし、新たな論点を付け加えて行ったので、久しぶりにすごく疲れました。何度か「難破するかも」と冷や汗かきましたね、なんとか結論に着地できましたが。 そんなこんなでしたが、内容をちょっと書きましょうか。 『諸相』を使って12ステップを言語化すると、このような図でまとまります。 &#13;&#10; &#13;&#10; ![[syoso_step01.png]] <div style="text-align: right;">   <a href="https://syoso.org/illustrations">『諸相』スタディ図番一覧</a></div> &#13;&#10; まずは回心の前提となる**自己絶望**はステップ1,2がそれに相当します。 そして回心のプロセスである**自己放棄(Self-Surrender)** はステップ3〜12に相当。それらの道程を通して得られる人格の要素は「**受動性**」です。この受動性があって、初めてアルコホーリクはハイヤーパワーと交流体験を持つことができる、つまり**祈り、導きを受ける**ことができるようになる。 ビル.Wは「12ステップは宗教に古くからある原理を借りてきて作った」と言っていますが、その宗教に古くからある原理とはこれのことです。シンプルですね。 しかし日本のAAはこのシンプルな原理がわからず、40年ほど苦労しました。その苦労は無駄になっていないと思いたいのですが、マインドフルネスや認知行動療法、また福祉や心理技法にAAプログラムが影響を受けて原理の矮小化が進んでいることを見ると、そうも思えません。 12ステップは自己肯定の原理ではなく、上記を見れば明らかなように自己否定の原理です。スポンサーシップも、スポンサーが手助けすべきなのはスポンシーの自己否定(自律の放棄)であって、自己肯定感なる謎の慢心を強化する手助けではありません。 ビル.Wはこのように語っています。 &#13;&#10; &#13;&#10; > ジェームズによって幅広く記述された回心こそが私たちの基本的なプロセスのようです。他のすべての仕掛けは土台作りに過ぎません。一人のアルコホーリクがもう一人のアルコホーリクに働きかけるとき、その人はこの本質的な体験を強化し、維持するのです。[^1] &#13;&#10; 私たちAAがこの「基本的プロセス」を手放し、失ったときAAは滅びるでしょう。それは塩気を失った塩のようなものだからです。 福祉や医療の有用性は福祉や医療にまかせておけばよいのです。伝統宗教の有用性は、伝統宗教にまかせておけばよい。AAはAAにしかない、シンプルでスピリチュアルな原理をその有用性として持っています。 そんな、私たちが神から与えられた役立つ道具を再発見する道のり、それが2000年代からの日本でのビッグブックムーブメントでした。それもやっとこさ、20数年かけてスポンサーシップを掘り起こす作業にまでたどり着けたのでしょう。 さて、私たち[ステップテイカー](https://ieji.org/2020/4721)が掘り起こした原理を実際に使い有用性を生み出すのは、AAの最前線にいるみなさんです。今苦しむアル中のためのAAミーティングやメッセージの活動こそが、AAの最前線であり主戦場です。そこでこそ原理が活かされなければ、AAの生命は失われてしまいます。 &#13;&#10; &#13;&#10; <center>・ ・ ・</center> &#13;&#10; みなさんに、ジョー・マキューの言葉を贈りましょう。私はこれからも私の仕事をしますので、みなさんはみなさんにしかできない仕事をしてください。それがAAの「一体性」ですので。 &#13;&#10; &#13;&#10; > 私たちは、一人ひとりが特定の目的に仕え、特定の「仕事」を行うためにこの地球に生まれてきた。それが神の私たちに対する意志である。 > その仕事が何であるかは、私たちの内側に秘められている。私たちは覚悟を決める必要がある。この地球にいる間にその仕事を行うか、それとも、自分自身のことだけに関わる生き方をするかである。私のこれまでの経験によれば、人間にとってもっとも幸福な時とは、自分の仕事が何であるかを見つけ、それを実行し始める時である。[^2] &#13;&#10; [^1]: ビル・W, 2024,「ビル・Wに問う (32) AAは宗教なのか?」, 心の家路, (2024年11月17日取得, https://ieji.org/lets-ask-bill-w/lets-ask-bill-w-32 ). [^2]: ジョー・マキュー, 2007,『[ビッグブックのスポンサーシップ](http://kaifukuken.shop-pro.jp/?pid=102236972)』 依存症からの回復研究会.