<p align="right"><span class="small-text">公開日: 2024-11-20<br>更新日: 2025-1-26
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# スタディ通信:23年12月号
なんか寒暖差が激しい日々が続いていますね。みなさん、お元気ですか。
私のほうはいつもどおり体調を崩しています。もうこれは年中行事ですので、体調不良というより「デフォルト」ですね。
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### ふりかえり
先日行ったセッション17は、『諸相』スタディのこの3年間の歴史の中でもっとも高度な概念的内容を扱った回になりました。ジェイムズのテーマが「哲学」なので、致し方ないとはいえ、なかなかにしんどかったと思います。2時間、お疲れさまでした。
[**シラバス : セッション12**](https://syoso.org/syllabus/session12)
ジェイムズは「世界観」を大事にする思想家です。その人がどのような世界観を持っているかは、その人の行為を決定し、そして結果に強い影響を与えていきます。
プラグマティズムは考え方と行為と結果を分けない思考法なので、行為の背後にある「世界観」の重要性も、他の思考法より高いものです。
セッション17はそんなプラグマティズムの思想家であるジェイムズの持つ「世界観」はどのようなものか、というテーマを足がかりにして、ジェイムズの神概念まで話を進めました。
『宗教的経験の諸相』という著作はジェイムズが書いたものなので、著者ジェイムズの神概念の内容を知ることは、『宗教的経験の諸相』を理解する上で避けて通れないからです。
同時に、このテーマはAAにとっても重要なものであることを強調しました。
AAは宗教ではないので、固定した神概念を提示することはありません。しかし、AAにはAAの世界観があり、その世界観の上で想定される神概念の基本形は存在します。
この点に関して、ミーティングでは林研氏のテキストを引用しました。
> 根本的経験論は、知覚されたものを「表象」として事物そのものと区別するようなことをしない。つまり経験自体をそのまま実在として認めるのである。この立場は個人の意識(主観)と世界(客観)を区別しないという点でも「親密」である。実在は個人との関係において実在するのであり、それ以上の文節化は不要だということである。さらにジェイムズは、「一切形式(all-form)、一元論的な形式はよそよそしさをもたらし、各個形式(each-form)、多元論的な形式は親密さを損なわずに保つ」[PU 775]と述べ、個人的・個別的な視点が多元論に、そして親密さに直結すると述べている。
>
>>神的なものは単一の性質を意味することはあり得ない。それは様々な人間が交互にその擁護者となることで皆価値ある使命を見いだせるであろう、一群の性質を意味するものでなければならない[VRE 437]。
>
> この見解に伴い、一元論の神という観念は否定される。なぜなら、「唯一絶対の神」は完全な自己充足性を備えていると規定され、外部の何物をも必要としないからである。そうした点が強調されることで神は孤立した存在となり、われわれと縁遠くなり、相互的ではない存在となる[PU 641-642]。一方でジェイムズの多元論は、不完全な世界において、われわれ不完全な行為者の間に神がともに参加しているということにこそ希望を見出す。つまり、一般に神は絶対的であるべきだと考えられがちであるが、経験の事実から見るならば、神に必要な属性は絶対性よりも「親密さ」だというのがジェイムズの指摘なのである。[^1]
AAのテキストを読むと、そこに描かれる様々な神概念は、ジェイムズの言う「親密さ」をもって**私たちの生活に関わってくる神**であることがわかります。
そのようなAAの神概念の基礎には、二元論や一元論ではなく、**多元論を土台としたプラグマティズム**が横たわっています。そのような話をしました。
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いや、しかしこのように要旨をまとめるとシンプルなことなのですが、これを『諸相』テキストを読解しながら理解するのは骨が折れます。多くのAAメンバーが『諸相』にチャレンジはしたけれど、読むのをやめてしまった理由もわかります。これはさすがにしんどい。
何の因果か、私はこのようなことが好きな性質をもって生まれてきたので、『諸相』の中の役立つ概念を取り出して12ステップと結びつけて提示するのも、AAでの自分の役割なのでしょう。
しかし、もう少しのんびりとスタディをやりたいのも事実です。
現在、『諸相』スタディ全体のシラバスを作成しながらミーティングを進行するという、なんというか余裕のないことをやっています。
なので、一回一回のミーティングでなんとか論旨を通して結論を導き出せるように、話しながらミーティングをリアルタイムに構築しているのが現状です。
ですが、来年6月くらいには全体のシラバスもでき上がります。そうなれば、ゆったりと一つのテーマを深堀りしたり、その場の流れで脱線したりが楽しめるようになる見込みです。
シラバスを作るのに3年かかっていますが、それだけ私の成長もゆっくりということなのでしょう。
あとしばらく、バタバタしたリアルタイム構築にお付き合いください。
[^1]: 林研, 2021, 『[救済のプラグマティズム](https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393321058.html)』 春秋社, 59-60.