<p align="right"><span class="small-text">公開日: 2024-11-21<br>更新日: 2024-11-21 </span></p> # スタディ通信:2022年7月号 『諸相』スタディをやり始めてはや1年半が経ちました。その間に、色々と考えたことがあります。 --- ### 今までのやり方 まず、『諸相』スタディは「参加者もジェイムズの『[宗教的経験の諸相](https://www.iwanami.co.jp/book/b246798.html)』を読めるようになってもらう」というコンセプトで始まりました。なので、一人で読む人のガイドになれるように、『諸相』の内容をなるべく丁寧に、ジェイムズの論述の流れを追っていくことを心がけてきました。 そんなやり方で1年半やってきましたが、最近になって考えることがありました。それは、『諸相』は今から100年以上前に知識人向けに書かれたものであり、その論述はわかりやすくないという事実についてです。もとはギフォード講義ですしね[^1]。 &#13;&#10; &#13;&#10; ジェイムズの論述は、大まかな流れはあるものの、脱線や複雑な振り返りや挿入や、わかりにくい言い回しに満ちています。それは100年前の知識人にとっては教養ある常識的な書き方だったとしても、現代の私達にとってそれが読みやすいかと言うと明確に「**No**」です。 そう、『諸相』は読みにくい本なのです。伊藤邦武先生の『プラグマティズム入門』という新書の中には、このような一文があることからも、ジェイムズの論述は多くの人にとって読みにくいものであることがわかります。 &#13;&#10; &#13;&#10; > プラグマティズムの中核的思想を説明するジェイムズの説明は、このようにかなり込み入ったものであるし、その文章も読んですぐ意味がつかめるような、単純素朴なものではない。これは彼の講演が一般の聴衆に向けたものといっても、その聴衆の多くは知識階級からなり、その意味で講演自体が初心者向けのものではなかったことにも由来している。そのために、ジェイムズを読むものは誰でも、はじめはかなりとっつきにくいと感じるかもしれない。[^2] &#13;&#10; このように読みにくいジェイムズの文章を読んでいくのは、それはそれでとても興味深いことなのですが、先日、こんな事を考えました。 「そもそも、12ステップに取り組む誰も彼もがジェイムズを読まなければならないとしたら、助かる人が減ってしまうのではないか?」 12ステップに取り組む人は、まずは12ステップという道具を使えるようになり、その効果を得ることが大切なはずです。その目的のためには、必ずしもジェイムズのわかりにくい文章を読みこなす必要はないはずです。そんなことに最近、気づいたのでした。 ### やり方を変えてみる そんなこんなで、やり方を変える必要があることに気づきました。 今までは「なんとか最後まで終わらせたい」という強い思いがありましたので、そこに気づく余裕はなかったのですが、最後までなんとか終わった今は、「より参加してくれる人の役に立つようにスタディを構築するにはどうすればよいか」という点に目が向くようになってきたようです。 なので、これからはスタディの方針を変えます。どう変えるかと言うと、今までの「参加者が自分で『諸相』を読めるようになる」から「**参加者のステップワークに役に立つ考え方を提供する**」という方針に変えようと思います。 &#13;&#10; &#13;&#10; 具体的には、今までのようにジェイムズの論述をひとつひとつ追おうとして、多くのトピックが並列するようなスタディの進行をやめて、**一回のセッションで多くとも3つくらいの12ステップの解釈に役立つトピックに狙いを絞り、それを繰り返し一緒に考えながら『諸相』を読んでいく方式にする予定**です。 6月の特別セッションでは、「祈り」という大テーマの中で - 12ステップとジェイムズの扱う「祈り」はどんな関係にあるのか - 祈りはどのような現象で、どのような効果があるのか というトピックに絞ってスタディを行う予定です。以前はもっと詰め込んでいたのですが、かなり削りました。 今後はこれまでの内容を削って、なるべくシンプルにしていく予定です。ですが、まだまだやっていく中で改良が必要だと感じています。どうなるかはわかりませんが、とりあえず気楽にやってみるつもりですので、また感想などを聞かせてください。 新しいやり方を試すのは、緊張する反面、どこかわくわくと楽しいものですね。 [^1]: Hyperion64, 2011, 「ギフォード講義の精神」, サイエンスとサピエンス, (2024年11月21日取得, https://hyperion64-universe.hatenadiary.org/entry/20110818/1313666020). [^2]: 伊藤邦武, 2016, 『プラグマティズム入門』 ちくま新書, 27.