<p align="right"><span class="small-text">公開日: 2024-11-19<br>更新日: 2024-11-30
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# それぞれの責任
> AAの中でミーティングを重視する人たちを **meeting maker** ミーティング・メイカー と呼び、12ステップを重視する人たちを **step taker** ステップ・テイカー と呼ぶのだそうです。ミーティング派と12ステップ派とでも訳しましょうか。二人は典型的な step taker でした。[^1]
さて、また雑記。
冒頭で引用したのは心の家路さんの記事です。AAのなかには大きく分けて**二つの流れ**があることを説明している文章です。
AAには「支え」の機能と「変化」の機能をそれぞれ担う道具があります。前者は「AAミーティング」、後者は「12ステップ」です。
これら二つの道具は、あざなわれた縄のように不即不離の関係でAAという一体性を構築しています。
そして前者をミーティング・メイカーが、後者をステップ・テイカーが担い合っています。
いうなればミーティング・メイカーは人間の絆や感情を大切にする左派として、ステップ・テイカーは12ステップを通じた超越(神)との繋がりを重視する右派として、共にAAを支えてきました[^2]。
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ここ数年はAAも世界的なコロナ禍の影響下にありました。
緊急事態宣言を受けて、長年定期的に続けてきたミーティングを閉じるAAグループも多く、その悔しさの声も聞こえてきました。
同時に、Zoom等を活用して新しくオンラインでAAミーティングを開く流れも活発化し、2023年1月には日本のAAで初めて[オンライン・インターグループ・オフィス(JOI)](https://aajapan-online-intergroup.org/)が発足しました。
そんな流れの中、私もずっとAAにいたのですが、23年に緊急事態宣言が終わりオフラインでミーティングを再開したAAメンバーからこんな声を聞くことが増えました。
<span style="text-decoration: underline; text-decoration-color: #F5A9A9; text-decoration-thickness: 4px;">「コロナ禍があけて、オフラインでミーティングを再開してみるとミーティングのノウハウや雰囲気が消えてしまっていた。病院などとの関係も以前とは遠くなり、ビギナーの流入も減って/止まってしまっている。AAミーティングは、かつてのAAミーティングではなくなってしまった。」</span>
24年になり状況はさらに悪化している、という話もよく聞くようになりました。
私が『宗教的体験の諸相』スタディ・ミーティングをコロナ禍の間からずっと開催してきたのは、AAのステップ・テイカーとしての責任を果たすためでした。
コロナ禍が終わり、オフラインでミーティングが再開されたとき、みんなが原理を忘れてしまっていた・アクセスできなくなっていたとなれば、AAの現場(各地域のグループ)が困ってしまうからです。
なので、ミーティング・メイカーが原理にいつでもアクセスし、それを学び、自分たちのミーティングでそれを活用できる環境を作ることが私のAAでの仕事だと感じ、実践をしてきました。その道具としてnoteやZoomを使ってきた。
しかし現在、気付いたことがあります。
緊急事態宣言が終わり、AAが「通常復帰」して、現場が「AAミーティング」そのものを見失った状況になっても、ミーティングのノウハウや本質をふたたび示すミーティング・メイカーがいないのです。
いや、私が知らないだけかもしれません。しかし私にはそういった動きは見えません。
AAは原理だけで成り立ってはいません。車の両輪としての左派のミーティング・メイカーがいてこそ12ステップも広く活用してもらえます。
しかし、コロナ禍のオンライン活動で**「AAミーティングは歴史的にこのようなものであり、それを私たちはオフライン/ オンラインで実践し失敗と成功の経験を蓄積してきた。それを広く公開して、今ふたたびAAミーティングの回帰点を示そう」**というミーティング・メイカーの動きがない。
そのような分析も、動きも、私には見当たりません。
一体、オンラインで毎週ミーティングを重ねてきたグループは、なにをしていたのだ?毎日のようにミーティングに参加してきたAAメンバーはなにをしてきたのか?
サイトやテキストなどの、形あるものを残せていないのだろうか?まさか口だけなのか。
そんな思いを感じながら、私も「しまった」と思っています。
ステップ・テイカーとしてホームページやテキスト作成、またスタディを積み重ねてきましたが、ミーティング・メイカーのそのような動きがなかったことは見落としていたからです。そこまで考えが回らなかった。
いや、だってミーティング・メイカーがやってくれると当然思うからさ。Not-Gotとビッグブックと自分たちの実践を突き合わせて、それをまとめるくらいはさ。
<center>・ ・ ・</center>
なので、今はけっこう困っている時期です。
はて、ステップ・テイカーの責任を果たすために原理を言語化しつづけたが、それを利用してもらうべき現場の様子が非常に怪しい。
ミーティング・メイカーからミーティングの本質の言語化という責任が果たされない今、私はなにをしたらいいのだろうか。うーん。
とりあえずは、今年いっぱいうんうん悩んでいると思います。しかしまぁ、引き続きAAのゼネラル・サービスとは距離を置きながら。
私はミーティング・メイカーの器ではないし、ステップ・テイカーとミーティング・メイカーの二つを同時にはできないから。
もどかしくもあるのですが、それが人間の限界なのでしょう。
しかし、困った……。
なんだかむなしくて、ため息が出てきています。一回、どでかく全てが崩壊したほうがいいのかもしれませんねぇ。土は土に、塵は塵に。
[^1]: なかやまひいらぎ, 2020, 「ジョーとチャーリーについて (1) Big Book Comes Alive!」, 心の家路, (2024年11月19日取得, [https://ieji.org/2020/4721](https://ieji.org/2020/4721) ).
[^2]: アーネスト・カーツ, 2020, 『[アルコホーリクス・アノニマスの歴史](https://www.akashi.co.jp/book/b532858.html)』 葛西賢太・岡崎直人・菅仁美訳, 明石書店, 371-397.