<p align="right"><span class="small-text">公開日: 2024-11-21<br>更新日: 2024-11-21
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# それでもなお、追い求めること
学界でACの代表格といえば偉大な数学者でもあったバートランド・ラッセルでしょう。
[**ラッセル(Bertrand Arthur William Russell)とは - コトバンク** ](https://kotobank.jp/word/%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%AB%28Bertrand%20Arthur%20William%20Russell%29-1605558)
[ラッセル=アインシュタイン宣言](https://kotobank.jp/word/%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3%E5%AE%A3%E8%A8%80-656277)や『[幸福論](https://www.iwanami.co.jp/book/b246828.html)』『[教育論](https://www.iwanami.co.jp/book/b246827.html)』などが有名かもしれませんが、彼は卓越した論理学者、数学者でした。
同時に、彼を今で言ういわゆる「機能不全家族」に育ったACとして捉えることもできるように感じます。名門貴族の家に生まれながらも、複雑で支配的な家庭環境で育った彼自身は、自分は「星と深海と暗い夜に属している種族である。」と最晩年に告白しているようです[^1]。
そんな彼は生涯「絶対確実な知識」を追い求めましたが、80歳を過ぎて「絶対に確実な知識に到達するという私の目的はついに果たされなかった。」と述べています。
確実なる知識には、人では決して到達できないけれど、それを追い求めることの大切さは彼の業績が証明しているのではないでしょうか。AAだって、たとえ失敗しても、今苦しむアルコホーリクの役に立つことを追い求めて、経験を積み重ねているのですよね。
AAの生き方は「確実なものには辿り着けないのだ」とへたり込むものではなく、不完全ではあっても、それでもなお、今苦しむアルコホーリクにメッセージを届けようと奮闘するものでしょう。
ラッセルが確実性を求め奮闘し、思想界、数学界を豊かにしていったように。
[^1]: 中井久夫, 2011, 『「思春期を考える」ことについて』 ちくま学芸文庫, 257.